第 2 章 武道の起源
1. 武術の起源
徒手空拳を以って戦う行為は古今東西、民族を問わず、人類発生と同時にその生存競争という防衛本能から自然発生的に行なわれて来た極めて普遍的な自然行為である。
武器や道具を創造する以前の原始社会において、人類が自の生命を危険から守るために徒手空拳を以って戦ったであろうこと、そして、知能の発達と共に人類が武器を創造し、同時に武器や素手での効果的な戦い方を思念工夫し、武術として発達させたことは誰もが容易に推測できる。
武術の起源を人類の防衛本能に求めた際、武術の起源が人類の起源であることに気付かされる。
2. 武道の本質的起源
武道は忠義、礼儀、信義に代表される儒教の朱子学を主に仏教的倫理観、道教思想、現地信仰(神道など)などの東洋的倫理道徳観の確立と来るべき真剣勝負に備えるための武術修得を「行」とする、いわば「行動の哲学」であった。
東洋の倫理道徳観は言うまでも無く、その大流の起源を古代インド、中国大陸とし、また伝播された国々によって独自な哲学的発展を遂げた。武道はおおよそ、この哲学的影響下にあった文化圏において特に争いの絶えない国や地域で発展を遂げたと推測される。
3. 近代武道の起源
一般論として、東洋で逸早く近代化の波に乗った国はいうまでもなく日本であり近代武道として確固たる地位に着いた種目は他でもない嘉納治五郎の創始した柔道である。他にも日本の国内において広く普及された近代武道には剣道、合気道、空手道などが上げられる。西洋の格闘スポーツ観には常に、レスリングに代表される組技の優位論とボクシングに代表される打撃技優位論が長きに渡り対立しながら存在した。これらの影響もあってか柔法としての柔道に対し剛法としての空手道が注目を浴び新興勢力として台頭することになった。しかし、その「組織力」が空手組織のそれを上回る韓国の国技「テコンドー(WTF)」が現在では一歩リードする形となっている。